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日比野日誌

すしの雑学

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以前、このコーナーでお話ししましたね。つけじょうゆのこと。あれは、誰が何と言おうと、魚につける方が正しいのです。でも、今回はそのことじゃなくて、しょう油を入れる皿のお話です。
あれ、何という名前でしょう。「のぞき」でしょうか、「おてしょ」でしょうか。
刺身を食べる時のしょう油皿を「のぞき」と言います。いわれは知らないですが、おもしろい名前ですね。おすしも、まぁ刺身に似たようなものですから、あの皿、「のぞき」でよいのかもわかりません。
ところが、このことば。どうやら関西地区のことばのようで、関東地方ではあまり使われません。代わって使われるのが「おてしょ」。「おてしょう」という のが正式でしょう。これはもともと、おむすびを握る際、手にまぶす塩を乗せておいた皿、「お手塩皿」の転訛したものです。いまでは「小皿」を指すようで、 「のぞき」よりもやや大きめだという感があります。
私の行きつけのすし屋は、「おてしょ」と呼んでました。

*その40*

2009.06.23

さて、ある年のこと。毎年の決まりごとで、献上品のすしはいつも通りでよいかどうかを、部下が上司に問うています。
「江戸の将軍様にお送りするのは5月1日でございます。が、今年はすしにできるような大きさのアユが、まだ獲れません。いかがいたしましょうか」
すると上司は「将軍様への献上じゃ。予定を変えることは相ならん。アユが小さくてもよいから、例年通り、5月1日に送れ」とのこと。さすが、名答ですね。

しかし、この年が特別でもなく、この年の5月1日は、今の暦では相当寒い時期。アユなんか、まだ、泳いでいるわけ、ないのです。獲れないのも当然でした。で、この話には続きがありまして、「将軍様に届けるのは規則どおりだが、その『毒味』分は、十分太ったアユが獲れてからでよろしい」。当時はすしを食べ るのにも、毒味があったのです。将軍様はやせたアユしか食べていないのに、その「毒味」分は丸々と太ったアユ。しかも、本体が食べられてから「毒味」が到 着するという、なんとも不思議な話です。

40いよいよ夏の到来です。梅雨アナゴとか夏アナゴとか言われる、アナゴのおすしです。
アナゴといえば関西、瀬戸内モノが著名ですが、関東だって負けていません。羽田のアナゴは、知る人ぞ知る絶品です。あ、ちなみに、関西では焼きアナゴ、関東では煮アナゴが主流なんです。あなたは、どちらがお好きですか。
さて、郷土ずしのすしダネとしては、やはり関西地方が多いのですが、あえてそれ以外に目を向けてみると…。あったあった。伊勢湾周辺です。このあたり、 何本もの川が流れ込んで、きれいな水に恵まれたところ。このため、他のところのアナゴより、ずいぶん大きめのものが獲れるのです。とくに三重県の伊勢若松 は、江戸時代からアナゴ漁が行われていました。
写真上は、あるお店で撮ったもの。立派な握りずしと、わかりますか。巻きずしの芯にも、アナゴが入っているんですよ。写真下は、これぞ郷土ずし。伊勢市 のおばさんたちがやっている「月ごとの集まり」のごちそうだということで、もちろん、非売品。ごちそうにもいろいろ季節がありまして、7月にはアナゴの押 しずしが出てきました。
アナゴはウナギの仲間ですが、それほど脂質が多くなく、またビタミンも豊富なので、夏バテ防止にはうってつけだそうですよ。

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