すしの雑学
「すし屋のカウンターにて」編 *その39*
2009.05.26
たいていのすし屋さんのカウンターには、せいぜい「しょうゆさし」がある程度でしょうが、その脇に爪ようじがある店が、たまにあります。
爪ようじとは歯のすき間に溜まった食べ物のカスを…、え~、汚い話は省略しますが、とにかく、使い道はわかるでしょう。食後にシーシーハーハーやるのは、すし屋さんではちょっとご遠慮いただきたいですね。
ところで、あの爪ようじ。明治から大正の頃の職人さんは、とても緊張したそうです。それはすし職人の腕を見るときに、非常に役に立つと言われていたか ら、なんです。すし飯を爪ようじで突き刺し、上に持ち上げても形は崩れず、しかも、口に入れたら握ったすし飯がほどける…。そんな具合のすし飯の握り加減 が最高とされたのです。
今度爪ようじがあるすし屋さんに行ったら、ご飯に突き刺してみますか? 今でもそんな握り方を研究している職人さんだったら、驚くかもわかりませんよ。
*その39*
2009.05.26
はい、前回に引き継いで、太陽暦と太陰暦のお話です。太陽の動きをもとに1年を区切る暦が太陽暦。今われわれが使っている暦で、1年が約365日となっています。
これに対して、昔使っていたのは太陰暦。一年を月の満ち欠け周期で区切ってゆくもので、1年が300日足らずでした。たとえば両方が同じ日に元旦をス タートさせた場合、太陽暦ではその365日後に年末が来るのに対し、太陰暦ではその5日ほど前に、「あけましておめでとう」と言っているわけですね。
当然、太陰暦では日付はどんどん早くなります。やがて太陽暦と「ひと月」分の誤差が出た時に、1年を13ヶ月数えるのです。ということは、旧暦の5月と言っても、今の暦で言えば、ある時は今の4月になりますし、ある時は今の3月にもなるのです。
さて、そんな旧暦の動きに関係なく、アユが出回ってくるわけです。そして…、あらら、肝心のすしの話になる前に、また紙幅が足りなくなりました。以下、次号。
*アジずし*
2009.05.26
アジのすしと言えば、東海道本線の駅弁で有名ですね。神奈川県の大船から小田原にかけて、たいていの大きな駅で買えますね。だからと言って、アジのすしが開業当時の新作考案か、というと、そうでもない。実はこの地方の郷土料理でした。
各家庭ではめでたいときがあると、決まって握りずしの準備をしました。しかし、今のような冷蔵技術もない。タネは高野豆腐やシイタケ、玉子焼きくらいの もの。魚だったら、タコかマグロ…。あ、マグロって、電気冷蔵庫が出てくるまでは低廉なタネでした。
何よりも珍重されたのがアジです。アジも値段は高くないですが、それゆえに、さしたる保存方法も考えられず、あまり山奥にも運ばれませんでした。ですから、アジが刺身で食べられるところは、ぜいたくなところだったんですね。初夏からが旬です。
写真上は、小田原からちょっと山側に入った松田町の「昭和初期のもてなしずし」。シイタケや玉子焼きと並んで、まん中にアジの握りずしがあります。山の 中でもアジが出るとは、相当のごちそうだったのでしょう。写真下は、真鶴漁港の民宿で出ましたアジの押しずし。すしの歴史の上では、押しずしは握りずしよ り古いのですが、このあたりでは、握りずしの大きさを揃えるために箱を用いるようになったのだそうです。








