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日比野日誌

すしの雑学

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前回に続いて、「ネタケース」の話。あ、あの「ネタケース」。正確には「タネケース」と言うんです。握る魚を「タネ」と言いますね。ただ、職人の世界のこ と。客に聞かれちゃまずい話もあります。で、出てくるのが「隠語」。内輪だけに通用することばを作り出しました。タネも、ことばを逆さにして「ネタ」と呼 ぶようになったわけです。
さて、あの中、どうなっているのか、ご存知ですか。いえ、電気コードがどうとかいう話じゃありません。ケース内部の下の方。何かが敷いてありますか?
昭和の初めまでは、笹の葉を敷いたものでした。それが、昭和の10年代にはパセリが流行り始めました。もう、畑の中にいるくらい、モコモコしたケース内でした。
今じゃ、笹の葉に戻るか、あるいはハランか杉の葉っぱかで、パセリは少々、時代はずれに鳴りつつあります。皆さんの周りはどうですか?
え? ラップ? う~ん。衛生的には一番いいんでしょうが…。

*その30*

2008.09.02

華屋与兵衛が持っていた不満とは、「脂」でした。せっかくすしにした脂の乗りきった魚を、箱に入れ、しっかりと押しをかけるのです。これでは、旨味のもととなる脂が抜け出てしまいます。
そこで与兵衛は箱で押すのをやめ、代わりに「手」を使いました。これなら、脂が流れ出すことはありません。しかも、手早く握ることができる、つまり、客の目の前で、見ている間に作ることができるのです。これならば、作り置きする必要もありません。
この、なんとも手間のはぶいた、言い方によっては「間の抜けた」ようなすしが、意に反して大当たり。大人気となりました。当時は「握り早漬け」と呼ばれ ていましたが、これが「握りずし」の始まりです。もちろん、どこへ行っても食べられるようなものでなく、「江戸の郷土料理」でした。
また、手で握ることがめずらしかったらしく、やがて「握り」=「江戸前」といったイメージができあがるのです。

30香川県さぬき市長尾町に、梛木(なぎのき)神社という神社があります。神社といっても神道の神ばかりではなくて、いろいろな宗教が混ざっているそ うです。社殿(?)も、小さな祠があるだけですけどね。むかしはここで村の青年たちがあつまって、相撲大会をしました。商品は、神前に供えられた「すぼき ずし」でしたが、今やそんな話も遠い昔のことです。
「すぼきずし」とは、普通の五目ずしです。基本的に精進で、アナゴや生魚は入れません。これを大きめの握り飯にし、柿の葉で包んで、さらに納豆が入って いるようなワラのツトに入れます。こうすると、ツトが膨らんで、ほら、人間の足みたいに見えるでしょう。「すぼき」とはここら辺の方言で、「ふくらはぎ」 のことなのです。
近年、この習俗が復活し、小学生を呼んで奉納相撲を行うようになりました。9月の最終の日曜日です。「すぼきずし」もまた作られるようになりましたが、 「復刻版」は、柿の葉でなくハランを使い、握りも3分の1くらいの大きさです。「昔の子と違(ちご)て、今の子は、飯の量を食わんでなぁ」とは、世話役の おじいさんです。
大きなすしのかたまりを見て、「1俵、2俵」と数えた頃は、やはり昔のことになってしまったようです。

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