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日比野日誌

すしの雑学

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アガリの話
すし屋で「アガリ」とは、お茶のことを言います。
「何をわかりきったことを」と怒られそうかも知れませんね。でも、ちょっと待ってください。アガリって、本来「仕上げ」のことを言います。ほら、すごろ くでも、最後に「あがり」、すなわちゴールに着いて「仕上がり」になるでしょう? じゃぁ、すし屋に入って一番最初に飲むお茶を「アガリ」と呼ぶなんて、 なんだかヘンじゃありませんか?
実はすし屋のお茶には2通りありまして、お店に来てからまず最初に飲むお茶と、食べ終わって最後の締めくくりに飲むお茶。これはそれぞれ、「デバナ」 「アガリ」と、異なって呼ばれていました。デバナは「出端」、つまり「出し始め」という意味ですが、これが今では使われない。デバナをくじかれちゃったん ですね。要するところ、どれもこれも「アガリ」になってしまったわけ。
すし屋に入って注文も聞かないうちに「アガリ1丁」なんて、考えてみれば、失礼な話ですよね。

*その12*

2007.02.27

糀を使うすしは、いつ頃からあったのか。少なくとも平安・鎌倉あたりの時代までは糀は使っていませんから、それ以降のことでしょうか。「いや、魚の糀漬け (ご飯は使っていません)は平安時代にもあったのだから、糀ずしもあって当然」という方もおられましょう。要は、わかりません。
常識的に考えれば、室町の後期、あるいは江戸前期。すしに糀を混ぜれば、速く発酵することに気づきます。しかもこれなら、発酵しにくいところ、例えば冬 の寒さが厳しいところでもたやすく発酵させられます。結果、東北地方の、しかも日本海側で、しかも厳寒の冬場に、魚の発酵食がたくさん作られることになり ました。秋田のハタハタずしや山形・酒田の粥ずしなどが、江戸中期の料理本に載っています。
この糀を使ったすしを、すしの分類上、イズシといいます。北海道の飯(い)ずしが語源ですが、特徴はもうひとつ。野菜を使うことなんです。その典型例として…、あ、スペースがない。以下、次号です。

123月3日はひな祭り。よく作るちらしずしの他に、こんなすしはどうでしょう。ハマグリ汁にあわせた、ハマグリのすしです。握ってみたものと軍艦巻きにしたものです。
ハマグリをやわらかく煮るのは、実に大変。「あたぼーよー。ハマグリってなぁ、煮なきゃなま臭ぇし、煮過ぎると縮んでシワシワになっちまう」なんて、ど こかのすし屋のおやじさんがこぼしてたこと、ありませんか。本当に「ほどほどに煮る」ってのは、むずかしいですね。しっかり煮込んで、そのくせ、しっとり としたタレを塗る。この煮ハマの技術は、諸先輩の仕事を受け継いできた伝統のあるお店に残っていることでしょう。正当な江戸前の技法なんですね。
あれ、このハマグリ。よく見てください。火が通った形跡がない。そう、ナマのまま、握りずしや軍艦巻きなどに使っているんです。そして、すこぶる大粒。 「このハマグリ、粒がデカいだろ。水がたまってる江戸湾のものじゃなくて、外浜のヤツだからよぉ」とは、このすしを握った職人さんの弁。外浜。つまり茨城 県鹿島灘の産です。
保存技術が大進歩した今ではめずらしくもありませんが、煮ハマではなく生ハマグリをすしの具とするなんて、実は本当のすし屋さんでは、やらないことでした。

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