すしの雑学
「すし屋のカウンターにて」編 *その10*
2006.12.26
-つけ醤油の話・その2-
すしは、魚に醤油をつける。この当たり前のことが、大正から昭和の初期に、当たり前でなくなるのです。「すしは、ご飯に醤油をつけるべき」という人がいたのです。
ご飯がほどけて醤油皿に泳いでいるのは、誰が見たって美しくないものです。だからこそ、すしご飯には醤油はつけないのですが、ご飯に醤油をつけるという 人たちは、こともあろうに、「醤油につけてもご飯が崩れないように握れ」と、職人に言いつけるのでした。まったく、職人さんたちも困ってしまったようです が、客の言うことには逆らえません。
余談ですが、すしを口の中に入れる向きにも議論があって、舌の上にはすしご飯が乗るのが正当、だとか、醤油をつけた魚が乗るのが正当だとか。しまいには、飯と魚との味のハーモニーを楽しむため、すしは横向きに置くのが正当だとか。もちろん、どれが正解だとは言えません。
昭和初期の人は、暇な人が多かったんですね。
*その10*
2006.12.26
すしのご飯も食べようとするには、従来のすしではご飯がやわらかくなりすぎます。少なくとも「ご飯粒」がわからなくなるくらい発酵させる、というのはま ずい。そこで、発酵そのものを途中で止めてやる、発酵を生々しいうちにやめておく、ということが発明されます。これを、ナマナレと言います。
ところがここで、従来のすしでは考えられなかった「すしの骨がのどに詰まる」などということが起こります。なにしろ、発酵を途中でやめているのですから、 骨は固いままで残ります。人によっては、小骨の気にならない子ブナを漬けて「ナマナレ」と呼んでいたこともあるのです。
骨は口に残るし、頭も しっぽも残してしまう。やがて、「えーい、面倒だ。最初から骨も頭もしっぽも取ってしまってからすしに漬けたらどうだ」。こうしてできたのが、魚を3枚に おろしてご飯を抱かせた「棒ずし」です。ただ、酸味はやっぱり発酵によるもので、酢を使うことはありませんでした。
*かぶらずし*
2006.12.26
石川県のお正月料理で人気があるのが、かぶらすし。一見、漬物のように見えますが、れっきとした「すし」です。
すしの仲間に「イズシ」というものがありまして、塩漬け魚とご飯と糀と野菜を発酵させたもの。このかぶらずしは、カブラの輪切りに塩ブリをはさんでご飯と糀に漬け込んでいます。
これとよく似たものに大根ずしというのがあります。カブラの代わりに大根、ブリの代わりにニシンを使ったもので、作り方はかぶらずしと同じなのですが、値 段はこちらの方が安い。少し前までは、かぶらずしを食べられるのは金持ちで、庶民は大根ずしだと言われたものです。味は…。そうですねぇ、やっぱり「値段 が高い」だけあって、かぶらずしの方がおいしいですかねぇ。
かぶらずしは、今は金沢市周辺のものが手が込んでいて有名ですが、大根ずしまで含め ると、南は福井県、東は富山県・岐阜県へと分布が広がっています。そしてさらにその分布域は、新潟県・山形県・秋田県・青森県・北海道、そして朝鮮半島東 海岸と、非常に広範に及んでいます。これをもって、ある人は、「環日本海文化圏」があったことの証拠だ、などと言っていますが、いかがですか。
すしを語りながら、世界規模の話をする。お正月らしくて、いいじゃないですか。








