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日比野日誌

すしの雑学

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「流す」、すなわち平積みでやめておくこと。
昔はこれを「ダイヤのすし」と言いました。

ダイヤ…。宝石なんかじゃありません。「ダイヤ」は「台屋」。

大きな台の上にのせた数種の料理、これを「台の物」と言うのですが、台屋はそれを出すお店。
はじめは単に「デリバリー料理」ってな意味でしたが、
近世末期の握りずしが生まれた頃には、もっぱら、
遊廓に出入りしている仕出し屋のことを言いました。艶っぽいお店、だったんですね。
むろん、中にはいい「台屋」もあったのですが、大半は中の下。
時には、ひどい台屋にあたってしまう人もおりました。

戦前は、そんな風潮のなごりがあったのでしょうか、
平積みのすし盛りを持っていくと怒られたものです。
「バカ野郎! オレんちはカタギでぇ! ダイヤのすしなんざ食わねぇよっ!!」

今はみんなが「流し盛り」。ということは、皆さんが艶っぽくなっちゃった?

カウンターじゃ見かけませんが、すしの盛り方の話です。

「すし1人前」と頼むと、たいていは、浅い桶の中に
(昔は白木の桶だったといいますが、近年は塗り物がほとんどです)、
キレイに盛りつけられたものが出てきます。出前の時に、よく目にしますよね。

さて、あの盛りつけ方。昔はそうでなかったのをご存じですか。

昭和の初めまでは、握りずしの盛り方というのは、
桶の中に積む、いわゆる「桶積み」というものでした。
1段並べたらその上にさらに1段…という具合に、5〜6段積むのです。
1人前のすしでも、握りずしをわざと立てたり斜めにしたりさせたものです。

細巻きでも必ずひとつは、切り口が上向きになるよう積まれ、
決して「流す」ものではありませんでした。
数があればピラミッド状に高く重ねる「杉なり」という盛り方もしたんですが、今は…。

カンの漢字が「貫」だけではないことは、前にも言いましたよね。
では、本当に「カン」だったのでしょうか。もともとは「カン」ではなかったのでは…。

江戸後期、嘉永6年(1853)刊の『守貞謾稿』。
このコーナーでもしばしば出てくる本ですが、その「箱ずし」の記事の中に、
箱ずしは4寸(約12センチ)四方に押し出したものを「横四ツ竪三ツ」に切る、とあり、
その数「十二軒」と書かれているのです。「十二軒」。

この「軒」。おそらく「ケン」と呼んだのでしょう。いわば単位です。
「1軒」といえば家の単位だと思いがちですが、「大きく切った肉片」をも指しました。

「1ケン」がなまって「1カン」になった…。
まぁ、誰もが考えつく説ですが、この説、だれも言ったことがないのです。
ので、私が言っておくことにします。

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