日比野日誌
全国の郷土ずし紹介
山に囲まれた長野県飯田市の伊豆木八幡宮では、10月上旬の2日間、例大祭が行われます。この祭りはみこしや花火などでも知られるところですが、「サバずし祭り」の名でも知られている、神前にすしを供えるめずらしい祭りなのです。もちろん、「伊豆木の鯖鮨祭り」として、県の無形文化財にも指定されています。
この神社は慶長5年(1600)、武蔵国本庄から伊豆木に転封してきた小笠原長巨によって、飯田市松尾の石清水八幡宮を勧請したことが始まりとされています。サバずしを供える習慣も伝わったとか。でも、東国の本庄には、サバずしを作る習慣などありません。あるいは関ヶ原の戦いや大坂の陣などに繰り出した際に、家来が作り方を習って来たのかもしれませんね。昨今のサバは三河(愛知県)方面から運んでくるようです。
さて、神前に供えられえるサバずしは、立派な2尾の姿ずし。氏子総代らがお神酒や鏡餅などとともにサバずしを奉納し、直会(なおらい)。切り分けて味わいます。ただし一般家庭で作って食べるサバずしは姿ずしではなく、酢サバの切り身を混ぜたちらしずし。素朴ながらも、甘みのあるサバの酸味がしっかりとしみこんでいます。
神様はどうか知りませんが、私の舌はこちらの方が美味しいように感ずるのですが…。
■神前のサバずし
■一般家庭のサバずし