日比野日誌
全国の郷土ずし紹介
今回のおすしは、写真がありません。昔のおすしで、今は作られていない、要するに残っていないのです。
松百ずし。「松百」というのは能登(現・石川県)の地名。和倉温泉の近く、今の七尾市にありまして、今でも地名として残っています。
では、いつ頃のおすしか? それは今から400年ほど前の、江戸時代のおすしなんです。
「土地の名物」として人気があった? いえいえ、そんなレベルじゃなくて、食べたのは徳川将軍様。能登国を所領していた加賀藩が幕府に贈っていた、12月の献上ずし、それが「松百ずし」でした。
さぞや美味だった? まぁ、わざわざ不美味なものを将軍様に食べさせるわけはなかったでしょうから美味だったでしょうが、このすし、どうやって作ったか、わかっていないのです。いやそれ以前に、材料が何であったのかすら、わかっていません。一説にはアユともいわれますが、いやゴリだ、ヤドカリだと、ひとつの説にはまとまらないようです。。
ただ、このすしを漬けた桶の脇に「蛇の子」、すなわちタツノオトシゴをひとつ添えるのが決まりだったようです。写真は石川県のさる旧家に残っていたもの。中身はともかく、風流さは伝わってきそうです。