日比野日誌
全国の郷土ずし紹介
山はすっかり新緑の頃。中には、ちょっと大きい葉が見えますねぇ。あれは、ホオの葉。ほら、下駄を作る、あのホオの木ですよ。
あの葉っぱは大変便利で、食器にもなるんです。大きな葉はお盆のように食べ物を盛って、食べ残れば、今度はラップよろしく葉っぱにくるんで持って帰る。で、食べ終わったらくずかごにポイッ。まさに「エコ」ですねぇ。
さて、中身にばらずしを入れればホオ葉ずし。岐阜県の美濃地方山間部と飛騨地方全体に伝わっています。今は比較的長い期間売っていますが、もともとは6?7月が旬。包むのは、新芽が大きく育った、やわらかい葉っぱですからね。ポーッと暖かいすしを握って、軽く押しをかけてあります。だから30分も経つと、ホオの葉の香りがすしに移ります。そんなのをパクッ。え? お箸? いりませんよ、そんなもの。かぶりついてください。
ばらずしにも2種類ありまして、ひとつは、真っ白いすしご飯の上にシイタケやタケノコ、ニンジンに錦糸玉子などを散らしたもの。単調なホオの葉っぱをめくると、パッと華やかになります。もうひとつは、すしご飯に全部の具を混ぜてしまったもの。少々地味目ではありますが、温かみが感じられます。
ふたつのすしの分布域ははっきりしていて、前者は美濃地方東部、後者は郡上地方と飛騨地方。「この街はどっちのかたちも作るよ」なんてところは、絶対にありません。