日比野日誌
すしの雑学
すし職人は時々、ワケのわからないことばを使います。例えば、年下の者に対して、「おい、シャリを持って来い」などとね。
シャリはご飯のこと。仏様の「のど仏」の骨を「仏舎利(ブッシャリ)」と言いまして、それはそれは清らかに白いのだそう。その白さがお米の白さにつながって、やがて、すしご飯のことを言うようになったとか…。でも、そんなことは、どうでもよろしい!
これはすし屋の職人の間で使う「符丁(ふちょう)」というもの。お客さんの前では気が引けるようなことばを使う場合、あえてわからない表現にして言った のです。隠語ともいいますね。もっとも、ガリ(=ショウガ)、アガリ(=お茶)、ムラサキ(=醤油)など、今では「隠」から「表」に出回っているものもあ りますが…。
「ええっと、ガリがショウガで、ムラサキは…」なんて憶えないでください。これらは職人だけのことばでありまして、お客さんは使うべきものではないんです。堂々と「酢ショウガください」「漬け醤油ください」と言いましょう。