日比野日誌
すしの歴史・文化
さて、幕府に献上されていたのと同様、大変だったのが禁裏御用。いわゆる天皇家関係です。代表的なのが、大和の国の釣瓶ずし。このすし、『義経千本桜』っていう歌舞伎にも出てくる店で…、え?聞き覚えがありますか? そう!「釣瓶ずし」って、1年ほど前、この「すしの雑学」すし屋の屋号編(その27)で出てきた、あのすしなのです。このすしは、近在の名物として知られていた吉野のアユをすしに漬けたもの。だったら「アユずし」でいいじゃないか、と思うんですが、桶の形が変わってて、両端がニュッと出てる。ちょうど井戸で使うツルベ(釣瓶)に似ているから、「釣瓶ずし」なんですよ。今、正式に史料が残っているのは、天皇ではなく上皇。仙洞御所に上っていたものです。口にはマスク、手を叩いて合図する…。厳しさはどこでも同じです。あ、もちろん将軍御用でもありました。が、贈っていたのは紀州・和歌山藩でした。